

私が森亘先生と出会ったのは、医学部4年生の病理学総論の講義だったと思います。
論理明解な授業に感銘を受け、講義後、後を追い、エレベータの中でお話をさせて頂いたことを覚えております。大学卒業後、九段坂病院に行くと、森先生が週末に病理の標本を見るためにお越し頂いていることが分かり、私の当時専門であった肝臓病の肝組織切片の標本を一緒に見て下さることから交流が始まり、その後、心身医学の重要なこと、および臨床医学の基盤としての「治療的自己」の重要性についても深くご理解を頂き、また、私の主催させて頂きました大きな学会すべてにおいて特別講演を賜りましたことに深く感謝いたしております。私の人生の中で、森亘先生との出会いは、この世に私が生まれてきた意味をいろいろな面で教えて頂くことができ、祖父母(私は母方祖父母の養子です)、両親と共に、心から尊敬する存在でした。
故森亘先生ご略歴
1926年1月 | 東京都に生まれる |
1938年3月 | 東京高等師範学校附属小学校 卒業 |
1943年3月 | 東京高等師範学校附属中学校 卒業 |
1947年3月 | 旧制第一高等学校理科乙類 卒業 |
1951年3月 | 東京大学医学部医学科 卒業 |
1956–1959年 | 米国Yale大学 留学 |
1960年10月 | 東京医科歯科大学助教授(医学部・第1病理学講座) |
1966–1967年 | 英国Cambridge大学 留学 |
1968–1973年 | 東京医科歯科大学教授(医学部・第1病理学講座) |
1973–1985年 | 東京大学教授(医学部・病理学教室) |
1981–1983年 | 東京大学医学部長(併任) |
1985–1989年 | 東京大学総長 |
1989–1998年 | 科学技術会議議員(常勤) |
1992–2004年 | 日本医学会会長 |
その間、国立大学協会会長、日本学術会議会員、臨時脳死及び臓器移植調査会会長代理、医道審議会会、、国際病理学会協議会会長、国際大学協会会長、たばこ事業等審議会会長、国会等移転審議会会長、カーネギー会合(G8閣僚級サイエンス・アドバイザー定期会議)日本代表、などを歴任。その後は、東京大学名誉教授、公益財団法人医療科学研究所理事長、東京大学同窓会連合会会長、国際大学協会名誉会長、公益社団法人「小さな親切運動」本部代表、IDE (Institute for Development of Higher Education)大学協会会長を務める。
学術面では、日本学士院会員、日本病理学会名誉会員、日本肝臓学会名誉会員、日本癌学会功労会員、米国科学アカデミーInstitute of Medicine外国人会員、英国Royal College of Pathologists名誉フェロ一、米国Philosophical Society外国人会員、American Academy of Arts and Sciences外国人会員、などに所属。
主な業績: 劇症肝炎が起こる仕組みの解明、メラトニンの発見
受賞・叙勲歴
1996年 | ドイツ連邦共和国功労勲章大功労十字星章付大綬章 |
1998年 | 文化功労者 |
2001年 | 勲一等瑞宝章 |
2003年 | 文化勲章 |
2004年 | 文京区区民栄誉賞 |
2012年4月1日ご逝去 満86歳
故森亘先生のお言葉
(2009年3月3日)
『人は、当たり前の事を当たり前にやる事が大切で、それが人の道である。目立ちたがったりするのは、人として恥ずべきことである。』
ノブレス・オブリージュとは
(nobless oblige)
広辞苑によると「高い地位に伴う道徳的・精神的義務」とされている。直訳すれば、「貴族の義務」。
「権力や社会的地位を持つ者は、相応の責任や義務を負う」ということを指し、欧米社会では基本的な道徳観として知られている。
故森亘先生がしばしば口にされておられた言葉です。

平成24年4月1日にご逝去された故森亘先生が、
生前、私のために書き残してくださった色紙です。
13年前の故森亘先生のお嬢様からの手紙には、
「わしが亡くなったらお渡しするんだよ」と
記されておりました。